抱きまくら ダンガンロンパ小話 2015年10月13日 アイランドモード眼日付き合ってるかどうかはお好みでどうぞ ホテルミライのコテージは広々としている。もちろんベッドも。人ひとりが大の字になっても、余裕がある。 だけど。「……せまい」 二人で寝るには少し物足りない。 横で眠る田中と壁に挟まれた日向は、どうすればいいんだと考える。一度起きて、田中を壁側に追いやってしまいたいが、身体に伸びる腕が身動きを封じる。しかも足まで絡ませて、まるで抱きまくらのようにされている。「ったく、のん気に寝てくれるよな」 こっちは密着する体温と、近くで聞こえる寝息に心臓がそれどころではないのに。 不公平だ。日向は容赦なく「田中。おい、起きろよ田中」と声を荒げた。俺だって、安眠が必要なんだよ。 呼び続けるとやがて、田中が薄く目を開けた。まだ夢から覚めやらぬ視線がゆらめいている。「……日向?」「起きたか。ならさっさと俺を離して距離を取ってくれ。じゃないと寝れない――っておい」 田中の瞼が眠気の重みに耐えきれず落ちる。腕は日向を離すどころか、力強く引き寄せ、そのまま胸の中に閉じ込めた。「おい、バカ。逆だ、逆。俺は離せって言ったのに、抱きしめてどうするんだよ」 日向は胸を押し返す。だが眠気で力の加減が出来ない田中によって、さらに強固に抱きしめられた。ご丁寧に、足もしっかり絡ませて。 完全に抱き枕だ。 規則正しい寝息に、日向は嘆息する。「これで寝れなかったら、田中のせいだからな……」 明日の作業は押しつけてやる。そう心に決めて、日向は僅かでも眠るため目を閉じた。それが無駄な努力だと、わかっていたけれど。 カーテンからのぞく空は濃紺。 まだ太陽が顔を出すまで、時間がかかりそうだった。 [0回]PR