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抱きまくら

アイランドモード眼日
付き合ってるかどうかはお好みでどうぞ



 ホテルミライのコテージは広々としている。もちろんベッドも。人ひとりが大の字になっても、余裕がある。
 だけど。
「……せまい」
 二人で寝るには少し物足りない。
 横で眠る田中と壁に挟まれた日向は、どうすればいいんだと考える。一度起きて、田中を壁側に追いやってしまいたいが、身体に伸びる腕が身動きを封じる。しかも足まで絡ませて、まるで抱きまくらのようにされている。
「ったく、のん気に寝てくれるよな」
 こっちは密着する体温と、近くで聞こえる寝息に心臓がそれどころではないのに。
 不公平だ。日向は容赦なく「田中。おい、起きろよ田中」と声を荒げた。俺だって、安眠が必要なんだよ。
 呼び続けるとやがて、田中が薄く目を開けた。まだ夢から覚めやらぬ視線がゆらめいている。
「……日向?」
「起きたか。ならさっさと俺を離して距離を取ってくれ。じゃないと寝れない――っておい」
 田中の瞼が眠気の重みに耐えきれず落ちる。腕は日向を離すどころか、力強く引き寄せ、そのまま胸の中に閉じ込めた。
「おい、バカ。逆だ、逆。俺は離せって言ったのに、抱きしめてどうするんだよ」
 日向は胸を押し返す。だが眠気で力の加減が出来ない田中によって、さらに強固に抱きしめられた。ご丁寧に、足もしっかり絡ませて。
 完全に抱き枕だ。
 規則正しい寝息に、日向は嘆息する。
「これで寝れなかったら、田中のせいだからな……」
 明日の作業は押しつけてやる。そう心に決めて、日向は僅かでも眠るため目を閉じた。それが無駄な努力だと、わかっていたけれど。
 カーテンからのぞく空は濃紺。
 まだ太陽が顔を出すまで、時間がかかりそうだった。

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