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ライカに星を 1

他キャラ出張り気味ですが、最終的には眼日になります。
ある程度まとまったらピクシブやピクトブランドにも投下予定です。





 あの日、ひと目から隠れるようにして、アイツは泣いていた。
 あの背中を見てから、オレの胸に棘が刺さってずっと抜けないでいる。
 ちくちくと痛む度、オレは考えた。
 あの時、どうするべきだったんだ。
 声をかければよかったのか。
 もしくは謝ればよかったのか。
 それとも――知らないふりを突き通すべきだったのか。
 未だに答えは出ていない。


 青いペンキをぶちまけたような青空に、太陽がこれでもかと容赦ない日差しが楽園に降りそそぐ。
 雨が降る様子も皆無。今日も絶好のアイランド日和だ。
「うわっ、今日もあっちいな」
 冷房の効いたスーパーマーケットから一歩でるなり、南国の暑さが肌を撫でる。温度差ですぐ汗ばむ額を拭い、左右田和一はうんざりしたように空を見上げた。
「たまにはくもりがあったっていいだろ……。ずっと晴れてるのはどういうことだよ」
「仕方ないだろ。天気は俺たちじゃ変えられないんだから」
 左右田の後ろからカートを押しながら日向創か「いっそウサミに頼んでみたらどうだ。案外叶えてくれるかもしれないぞ」と思いつきをした。
「どうだかな」と後頭部に両手を置いて左右田は空に向かって身体を反った。
「ウサミのヤツ、アレで結構厳しいんだぜ。この前コーラ飲みすぎだからってスーパーのコーラいきなり全部撤去したんだぞ。ありえねえだろ」
 ウサギのぬいぐるみがステッキを一振りすると同時に、陳列されていたコーラが目の前で消失してしまった先日を思い出す。あの後平身低頭で謝り、飲む量を決められた上で元に戻してもらっている。
「それは左右田が悪いな」
 死活問題を笑われ、左右田は「冷てえヤツだな」とむくれる。
「そう怒るなよ。今日はそういうの関係なしで飲めるんだろ」
 日向はカートで山盛りになっているジュースやお菓子、その他食材を見る。
「飲める時に飲みタメしとけよ」
「わかってねえなぁ。喉が渇いてほしい、って時に一気飲みするのがいいのによぉ……」
「おいおい、文句ばかり言うなって。ほら、みんなが待ってるから急ぐぞ」
「あー、はいはいっと」
 カートを押して歩き出した日向の後ろを、左右田は気のない返事と共についていく。
 向かう先は隣のホテル。短い距離だが、道路は舗装されてない。がたがたとカートの車輪が、道路の不安定さを訴えるように音を立てる。
 日向はカートが倒れないよう慎重に進む。
 苦心している背中を、左右田はぼんやり見つめた。

 真夜中。ホテルの裏側。 崩れ落ちる後ろ姿。
 身体を折り曲げ、声を殺しきれず泣いて泣いて泣いて。
 肩を震わせるアイツに、オレはかける言葉も失った。
 そして耳元に、あの絶望を煽るようなふざけた声が囁く。

 ――あれぇ、左右田クンは声をかける資格があるのかなぁ?
 ねぇ、あると思ってる? あると思ってたらとんだお笑い草だね!
 情況によって仲良くする人ころころ変えて、友達だ、って言ってたヒトをあっさり突き放してたりして。それで終わった後でまた友達ヅラするってさ……。それって上っ面だけがいいお調子者だよね!

 うぷぷぷ、と笑いながら耳障りな声は、的確に心に突き刺さった棘をさらに奥へと押しこんだ。
 それは自分で思ってたことだ。
 今さらムシが良すぎるだろ。
 だから最後の選択肢を選んだ。見ないフリ、気づかないフリ。オレは何も知らない。
 でも、それでホントによかったのか。あれから随分経った今も、疑問が頭をもたげている。
「左右田?」
 日向が左右田を振り返った。考えごとをしているうちに足が止まっていたのか、距離があいている。
「早く来いって。待ってる奴らに怒られるぞ」
 からかって笑い、それでも待ってくれる日向に、また胸が痛む。
 左右田は口を開いたが、発する言葉を見つけられずにすぐ閉じた。
 ニット帽を深く被り直し「わかってるって!」と 足早に日向を追いかけた。

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