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 陽介に押し倒された日向は、ぱちりと目を丸くした。妙に切羽詰まった陽介をじっと見て「……正夢?」と首を傾げる。
「なんだよ、それ」
 日向とは対照的に、余裕のない声で陽介が言った。床に押し付けた日向の肩を掴む力が強くなる。
「昨日夢を見たんだ。何故か陽介とプロレスする夢」
「なっ……」
「一回マウント取られて今みたいな体勢になったから、それが重なって。で、それが正夢になったのかと」
「んな訳ねぇだろ!」
 陽介が叫んで、日向の言葉を否定した。
「お前さ、考えてみろよ! 付き合ってる二人が良い雰囲気でいるところにこの体勢! この流れでヤるって言ったら一つしかねぇだろが!」
「……だから、プロレス?」
「だーかーらー!」
 空気読めよ!と真っ赤になって怒鳴る陽介に、日向はぷっと吹き出した。
「いや悪かった。冗談冗談」
「……へ?」
「ちゃんと分ってる。陽介が何したいのか」
 日向は腕を上げて、陽介の頬を指先で撫でた。
「かわいいな、陽介は」
「お前は質わりーよ……」
 深々と息を吐く陽介は、それでも日向の上から退かない。きっと日向を見据え「見てろよ。プロレスよりすげえことしてやるからな」と挑発する。
 それはどんなことなんだろう。そう思いながらも、日向は「お手柔らかに頼むよ」と陽介の首に腕を回して引き寄せた。


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