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スーダン 眼日

アイランドモード前提。
くっついてはないです。


 自分のだけじゃない、他の足音が重なるのが当たり前になった。
 何をするでもなく、一番目の島を歩いていた田中は、隣をちらりと見た。
 そこには、日向が当然のようにいる。楽しそうに、午前の採取であったことを話している。
「――でさ、終里のヤツ、木に登って揺らせば、沢山枝とか木の実とかってはりきっちゃって、弐大から止められたんだよ。でもそれで納得するヤツじゃないだろ。危うくバトルするんじゃないかってヒヤヒヤしてたけど『アレ』をしないって一言でピタリとおとなしくなってさ。すごい効果だよなぁ」
 日向は思い出し笑いをする。それに対して田中は腕組みをして「ふん」と鼻を鳴らした。
「どこに行っても騒がしい奴等め。孤独を愛する俺様からすれば相容れない存在よ」
「ははっ、お前うるさいの苦手だもんな」
 そう言って日向はまた笑った。そして、スラックスのポケットから紙切れを二枚取り出した。ウサミのイラストが印刷されているファンシーな絵柄に、かわいらしいフォントで『おでかけチケット』と表記されている。
「じゃあ、今日も静かなところがいいよな。お前の行きたいところを選んでくれ。俺はそこで構わないから」
 日向の手にあるおでかけチケットを見て、田中はしばし考えた。
 そして答える。
「たまには貴様が赴きたい場所を示したらどうだ。ここのところ、ずっと俺様に選択肢を委ねているだろう」
「えーと……。そうだったか?」
 首を傾げる日向に「そうだ」と田中が鷹揚に頷いた。
「俺様の記憶力を見くびらないでもらおうか」
 前回は図書館。さらにその一つ前は映画館。そしてそれ以前もすべて行き先は田中が選んでいる。日向はそれにイヤな顔一つせずついてきた。
 こちらを気遣う日向の厚意に、田中はいつまでも胡座をかくつもりはない。日向は俺様の特異点。此奴とならば、どこだろうと我が安息の地になりえる。
「さあ、貴様の心に浮かびし彼の地の名を、高らかに告げろ。さすれば俺様は選ばれし地の元まで導かれてやる」
 きっと睨みつける田中に、日向は「……えーっと」と困ったように頬をかいた。
「た、田中の行きたいところ?」
 返ってきた疑問形の言葉に、田中の眉間に皺が刻まれる。
「……それでは意味がないではないか」
「でも田中の行きたいところが、俺の行きたいところなんだよ。そうしたら、お前の楽しそうな顔が見れて、俺は嬉しくなれるって言うか……うん」
 自分の考えに納得したように、日向は小さく頷く。そして田中を見て、笑った。
「やっぱり俺の行きたいところは、田中の行きたいところだな。……それじゃ、ダメか?」
 日向は下から顔を覗き込むように田中を見た。少し不安そうに伺う上目遣いに、田中の心臓がどきりとする。顔が一気に熱くなり、日向の視線から背けた顔をマフラーで隠した。
 つまりは、お互い様なのだ。田中にとっては日向がいる場所がどこでも落ち着く。それと同じように日向も田中のいる場所にいたいのだと。
「そ、そこまで言うなら勝手にしろ」
 マフラーの下、くぐもった声で田中はそっぽを向いたまま日向に言った。
 田中が照れていると察したのだろう。
「わかった。勝手にする」
 そう答えた日向の声は、楽しそうに弾み、田中の耳まで流れ込んだ。


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