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二次創作(小説のみ)やオフラインの情報を置いてます。

怪我の功名 主人公+花村+完二


 頭の痛みで目が覚めた。まず見えたのが紫色の派手な天井。眼鏡越しに眩しい光が目を刺し、不愉快に眉間へ深い皺を刻む。
 何がどうなってんだ。完二は床に手を突き、起きかけた。
 しかし「動かないほうがいい」と横から伸びた手がやんわり肩を押さえる。
「意識ははっきりしてる?」
「……橿宮先輩」
 傍らに膝をつき、完二の様子を見る日向に「オレ……どうしたんスか?」と尋ねた。
「シャドウにやられて気絶してたんだよ」
 日向の隣で立っていた陽介が、腕組みをしながら日向の代わりに答えた。
「覚えてないのかよ」
「……いやさっぱり」
 記憶の糸を完二は手繰り寄せる。進む先をシャドウが塞いだのは覚えている。そのシャドウが完二の弱点である疾風を巻き起こしたことも。疾風に巻き込まれ身体が宙に浮かんだと思った瞬間から先から、ぷっつり意識が飛んでしまっていた。
「吹き飛ばされて床に叩きつけられたんだよ。……動かないから冷や冷やしたけど、意識が戻ってよかった」
「ったく心配かけさせやがってよ」
 日向は勿論、軽口を叩く陽介も心配していたようだ。二人の表情に安堵の色が見える。
「心配かけてすいませんした」
 ゆっくり完二は起き上がる。細心の注意を払ったが、ふとした拍子にぶつけたらしい後頭部がずきりと痛んだ。思わず呻きながらそこに手をやると、熱を持った瘤が指先に触れる。
「痛い? ちょっと触るな」
 断りを入れ日向が完二の頭に出来た瘤に触れた。走る痛みに「いって」と肩を竦める。
「たんこぶ?」
 陽介に聞かれ「うん」と日向が頷いた。
「たんこぶって冷やすんだよな」
「冷やすっつったって、どうやって冷やすんだ?」
 陽介は辺りを見回した。
「この世界にまともな水とか期待できねーし」
「うーん……」
 完二の頭から手を離し、日向は顎に手を当て口を尖らせつつ考え込む。
「いや先輩。そこまで考えなくても」
「怪我人は黙ってる」
「……はい」
 ぴしゃりと完二の遠慮を抑え考えていた日向は、妙案を思いついたのか「あ」と顔を上げて立ち上がった。そして二人から距離を取り、掌を上に向ける。
「――ジャックフロスト」
 掌に落ちてくるカードを砕き、日向はペルソナを召喚する。ヒーホー、とかわいらしい声で現れたジャックフロストが、その場でくるりと一回転し日向を見上げた。
 日向はジャックフロストの丸っこい目を見て頷いた。それだけで通じたのか「ヒホ」とジャックフロストも頷き、完二の後ろへ歩いていく。
 ジャックフロストは背伸びをして、完二の瘤を冷やすように頭を撫でた。最初は冷気に身体が強張った完二だが、次第に表情が嬉しそうに緩みだす。
「……アイツ今、頭痛いの吹っ飛んでると思うぜ。見ろあの顔。可愛いものに触られて喜んでるし」
 戻ってきた日向に、陽介は顎をしゃくって完二を指し示す。怪我してよかったと思っていそうな完二のしまらない笑みに、心配も忘れて呆れた。
「癒されてるんだろうな」
 日向が呑気に言う。
「ジャックフロストにしてよかった。一瞬サキミタマと迷っちゃって」
「その二択だったら俺もジャックフロスト選ぶな」
 顔のついた勾玉より、断然いい。
「だろ」と満足そうに言って、日向は完二を見た。
 ジャックフロストに一生懸命頭を撫でられている完二の表情は、ここ最近で一番幸せそうだった。

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