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壇主小話


※同棲設定壇主ですよ


 濡れた髪にタオルを被せ、入浴を終えた七代は居間に向かった。
 居間は電源がつけられたテレビがニュースを流している。先に風呂から上がっていた燈治が横になってそれを見ているようだった。
「燈治さーん。お風呂からあがったからおやつ……」
 冷凍庫にしまったアイスクリームを食べてもいいか聞きかけた七代は、途中で言葉を止めた。気配を感じればすぐこちらを向く燈治が、テレビを見たままの状態から動かない。
 この反応は、おかしい。
「燈治さん?」
 七代はそっと足音を忍ばせて燈治の後ろで膝を突いた。そして身を乗り出し、顔を覗き込む。
 燈治は、寝ていた。自分の腕を枕代わりにし、もう片方の手でリモコンを持ったまま規則正しい寝息を繰り返している。
「……明日久しぶりの休みだから、気が緩んだんですかね?」
 燈治は割と忙しい毎日を送っている。大学での課題やドッグタグのバイト。家に帰ったら、食事作りをはじめとする家事もしている。こんなに近くにいるのに目を覚まさないのだからよほど疲れたんだろう。
 二人で住んでるのだし、負担も二人で分けよう。
 そう七代が手伝いを申し出ても、任されるのは洗濯物を取り込んだり、部屋の掃除をしたり、と無難なものばかり。そして台所には絶対立たせてもらえない。
「おれの料理の腕前が下手なことは認めますけど、だからって全部しようとするから、疲れが貯まりやすくなるんですよ、もう」
 不満を呟き、七代は寝てしまった燈治の頬を指先で突く。
 燈治は相変わらず眠りの中から動こうとしない。
 とりあえず七代は燈治の手からリモコンを細心の注意を払って抜き取り、テレビの電源を落とした。一旦部屋を出て、寝室から毛布を持ってくる。いくら燈治でも何もかけないままでは調子を崩してしまう。
 こっちがしてもらっているように、抱き上げて寝室までつれてゆければ良いのだけれど。悲しいかな燈治を抱える筋力を、七代は持ち合わせていなかった。
 よいしょ、と七代は燈治に毛布を優しく掛けた。そして今度は向かい合うように七代は腰を下ろす。
 最近はベッドの上で見上げるばかりだった顔を、見下ろした。手を伸ばし、まるで子供にするように眠る燈治の頭を撫でる。
 七代の隣に立つと宣言し、そのための努力を怠らない燈治。その思いを一心に受け、七代は愛されてるなと実感する。だから、こうして疲れて眠る姿すら、愛しく思えて。
「…………だいすき、ですよ」
 口を微かに動かし声にならない言葉を紡いだ七代は、そっと前かがみになって、燈治の頬へ唇を落とした。
 軽く触れただけの唇は直ぐに離れ、七代の頬には朱が走る。風呂に入ったばかりなのに、余計熱くなってしまった。今燈治の目が覚めてしまったら、恥ずかしさに部屋の端でうずくまってしまいそうだ。
 顔を見られないためにも、七代はそそくさと燈治と一緒の毛布に潜り込む。体温が高いから、湯たんぽ代わりになるだろう。
 燈治に身を寄せ、七代はそっと瞼を閉じた。ラグを敷いただけの床は堅い。けど、燈治の体温が七代の思考をゆっくり眠りの波へ誘っていった。

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