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スーダン小話


一つ前の田中と花村の小話後日談みたいな感じで。



 一悶着の末、花村に朝食を用意してもらった田中は、疲弊した表情で自分のコテージに戻った。
 鍵を開けた扉を、注意を払いながら開ける。
 魔法陣が描かれた布で朝日を遮られた室内は薄暗い。
「ん……」
 か細い声が部屋の隅から聞こえた。窓際に置かれたベッドの上、ブランケットに包まれた中から聞こえる。端からはふくらはぎから下がはみ出ていた。つま先が僅かに動き、シーツに皺を作っている。
 気配を忍ばせ、食事をローテーブルに置いた田中は、じっと脚を見つめる。常日頃はスラックスを履いているせいで、日焼けもなく白い。だが、膝頭から横にずれたところに赤い点をみつけ、慌ててそこから目をそらす。つい数時間前までしていた、ベッドでの行為を思い出してしまう。もっと見つめていたら、ブランケットを剥ぎ取って、最悪な目覚めを特異点にさせてしまうだろう。
 額に手を当て、ため息を一つ。
 もう少し寝かせておいてやろう。田中は、床に散らばった洋服を拾い集める。ひとまとめにした衣服はソファにのせ、ロッキングチェアをベッドに向けて座った。
 ブランケットの山は、動きも少ない。未だ深い眠りのうちに意識があるようだ。
 肘掛けに頬杖をつく田中の眼差しが、ふと柔らかくなる。ただそばにいるだけで充足を得られる。そんな存在が現れるとは、まさに現の夢を見ているようだ。
 こうしていられる時間を、他の雑種によって妨げられるなど、言語道断。
 脳裏に花村の卑下た笑みが浮かぶ。喜々として関係を探る言動は、田中を辟易させるには十分だった。
 何としても阻止しなければ。ため息まじりに、田中はロッキングチェアに身をもたれる。そしてどうやって花村からの追求を交わすべきか考える。
 目を覚ましてブランケットから顔を出した恋人を見るまで、ずっと。


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