忍者ブログ
二次創作(小説のみ)やオフラインの情報を置いてます。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ジュンゴ主




 純吾がセンタリングパークに危険はないかと見回っていたら、階下から聞きなれた声が二人分した。一人は同じ名古屋支局の仲間である亜衣梨の声。
 そしてもう一つは――。
「……優輝」
 純吾の一番大切な存在、北原優輝のものだった。
 二人は階段に並んで座っていた。話しているのは専ら亜衣梨で時折相槌を打つ優輝は聞き役に徹しているようだった。純吾とあまり変わらない立場になっている優輝に思わず微笑む。亜衣梨は感情が高ぶるとまくし立てるように話す。恐らく、口を挟む暇もないんだろう。
 どうしよう。階上の植え込みから二人の背中を見つめ、純吾は迷う。毎日世界の復興に誰もが忙しく走り回っている中で、一時の休息時間。亜衣梨は純吾と同じ意味合いで優輝を気にしているところがある。邪魔したら、怒った彼女から鉄拳を喰らいそうだ。飛び上がって、垂直に振りおろされる手刀はなかなかきつい攻撃力を持っている。
 だけど、優輝が自分以外の誰かと二人きりでいるところを見つけて、純吾の心は波立つ。だって、優輝は純吾の――。
「……」
 純吾は無言で植え込みから離れ、階段を降りた。後ろからの足音に、優輝と亜衣梨が同時に振り向く。二人の目がきょとんと純吾を見上げた。
「ジュンゴ?」
「ちょ、いきなり出てきてなんなのよ!」
 優輝が首を傾げ、亜衣梨は案の定邪魔が入ってむっとしている。純吾は優輝の前に回り、彼の脇の下へ両腕を入れた。
 わっ、と優輝が驚く。軽々と肩にかつぎ上げられ目を白黒させた。
 呆然と見上げる亜衣梨に「……ごめんね」と純吾は眉尻を下げる。
「何がよ!? っていうか優輝下ろしなさいよねっ!」
 怒る亜衣梨に「できない」と純吾はふるふる首を振った。不安定な体勢から落ちないよう首にしがみつく優輝を両腕で支え「優輝、ジュンゴのだから」と言い放った。
「……は?」
「だから、ごめんね」
 呆然とする亜衣梨を余所に純吾は優輝を抱えたまま、さっさと階段を昇った。
「バカ!」とセンタリングパークから離れる純吾の背中を、優輝が容赦ない力で叩いた。
「いきなり何を言ってるんだ、お前は!」
「本当のこと、言っただけだよ」
「オレはお前のものになったつもりないぞ」
「じゃあジュンゴが優輝のものだ」
「だーかーらー!」
 降ろせ、と暴れられ純吾は仕方なく優輝を地面に下ろした。このまま名古屋支局にある自室まで連れていきたかったのに、と残念に思う。
 地面に立ち優輝が怒った表情で純吾を見上げた。
「オレはジュンゴのものだとか、ジュンゴがオレのものだとか。そういう以前にやらないといけないことがあるのはわかるか?」
「……?」
「アイリに謝れ」
 厳しい口調で優輝はセンタリングパークを指差した。
「今回はどこからどう見てもジュンゴが悪い。ジュンゴだってもしオレと話している途中でいきなり誰かにどこかへ連れていかれたらどう思う?」
「……イヤだ」
 せっかく楽しく話していたのに、と優輝に言われたことを想像して純吾は悲しくなった。そして気づく。亜衣梨も今、純吾が感じたことを味わっていることを。
「……ジュンゴ、アイリにごめんなさいする」
「うん。……それでいい」
 反省して肩を落とす純吾の片手を笑った優輝が取った。
「じゃあ早く謝ろう」
 来た道を戻りながら純吾は「謝った後、ジュンゴもいていい?」と優輝に尋ねた。僅かに振り向き優輝は前に顔を戻して言った。
「アイリ次第だ。まあチョップは覚悟しとけ」
「うん。がんばる。……あと」
「まだあるのか?」
「アイリとのおしゃべり終わったら、二人きりなれる?」
「……まあ、善処する」
 ほそぼそと呟く優輝に純吾はにっこり笑って「約束」と繋いだ手を強く握りしめた。
 

拍手[0回]

PR