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二次創作(小説のみ)やオフラインの情報を置いてます。

恋を嘲うのかね




「姉ちゃんが死んでから、親父毎日のように言うんです。もっと話をすれば良かったって。もっと話を聞けば良かったって。でも、もう、遅いんですよね。姉ちゃん……もう死んじゃってるから」
 日向は無言で話を聞いていた。尚紀から目をそらさず、じっと見つめる。
「誰だって思わないすよね。まさか、よりにもよって、自分の家族があんな風になるとか」
 行方不明になった早紀は、数日後無残な姿で発見された。電柱の上、逆さ吊りにされて。
「……だから、親父もお袋も」
 息急き切ったように喋り、尚紀は「……すいません」とゆっくり首をふって項垂れる。
「先輩には情けないことばっかり言っちゃって」
「別にいい。俺じゃなきゃ言えないこともあるだろ。そういう奴ぐらいも我慢するのよくない」
 日向は自分の弁当から摘まんだコロッケを、尚紀の弁当に入れた。
 増えたコロッケをぽかんと見つめ、尚紀の肩は力が抜けたように落ちる。
「なんか、ちょっと完二が懐くのわかる気がした」
「……尚紀は」
「はい?」
「尚紀も、後悔してる?」
「……どんなんすかね。わからないです。まだ」
 尚紀はフェンスの向こうへ、遠く視線を投げた。空は彼の姉が死ぬ前の日を思わせるように曇っている。
「……いきなりでしたから」
「そうか」
 尚紀が日向の考えを探るような目を向けた。
「先輩、やけに姉ちゃん、気にしますよね。やっぱり……あの人のことがあるからですか?」
 日向は肯定も否定も出来なかった。
 ただ静かに笑い、まつ毛を伏せる。
「……わからないな」

 そう、わからない。
 自分のことなのに。

 ――わからない。

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