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二次創作(小説のみ)やオフラインの情報を置いてます。

お迎え 主人公+陽介+菜々子




 テレビから戻った日向は、帰る前に食料品売り場で買い物をしていた。すぐ側にはそれに付き合う陽介の姿。ぐるりと売り場を周りながら、今日はあれが安い。あれは今度安売りするからもうちょっと待ったほうがいい、と助言している。
「教えてくれるのはありがたいけど」
 パック詰めされた豚肉を手にとって品定めする日向は、心配するように言った。
「そんな安売り情報買ってにべらべら喋っていいのか?」
 陽介が齎してくれる情報に助かっているのは事実だ。しかし、他の買い物客に抜け駆けしているような気がして、時たま罪悪感に捕われる。
 だが陽介は「いいって」と歯牙にもかけず笑った。
「どうせ明日にはチラシで出るんだし。橿宮はお得意さんだし。これぐらいのサービスぐらいは全然許されるだろ」
「軽いな……」
 閉口しつつ、陽介がそういうならいいのかも、とほだされかけた日向の制服から携帯が鳴った。いつもと違う着信音に陽介が目を見張る。携帯に掛かってくる着信で普段と音が違うのは特定の人物しかいない。
「菜々子ちゃん?」
「うん」
 豚肉のパックを元に戻し、携帯を取り出した日向はすぐに通話ボタンを押した。
「菜々子?」
『――あ、お兄ちゃん。いまどこにいるの?』
「ジュネスだけど……。菜々子はどこにいるの?」
 夕方に近い時間、菜々子は大低家にいる。しかし耳を澄ませてもつけているだろうテレビの声が聞こえない。その代わり、ぱちゃ、と水が飛ぶような音がする。
『んとね、今おそとにいるの。お兄ちゃんかさもってなかったから』
「あ」と日向は声を上げた。呆然としている姿に、陽介が怪訝に眉を潜める。
 すっかり忘れていた。いつも天気予報で確認しているのに、今日に限ってうっかり傘を堂島家の玄関に置いたままだった。降水確率は低いから大丈夫だろうとたかを括っていたが、テレビに潜っている間降り始めたらしい。
『だからね、お兄ちゃんのおむかえにいこうって思って電話したの。ジュネスにいるんだよね』
「うん。……ありがとう」
 簡単に待ち合わせ場所を決め、日向は電話を切った。何を話していたか知りたがっている目で見ている陽介に、一部始終を伝える。
「じゃあ菜々子ちゃん橿宮迎えにくるんだ」
「うん。――急ぐぞ」
 突然日向が来た道を戻りはじめた。カゴに入れていた食品を、次々元の場所へ戻していく。
「橿宮?」
「せっかく菜々子が迎えに来るのに、待たせるなんて俺にはできない」
「だろうな。お前菜々子ちゃんバカだし」
「ああそうだ、だから待ち合わせてからまた買い物する」
「認めちゃってるよこの人あっさりと」
 らしいっちゃらしいけど、と乾いた笑いを浮かべる。今更指摘するものでもない。
 おいてきぼりにされないよう陽介も、その後に続いた。どうせなら、フードコートでお茶でもしようぜ、と急ぐ日向に提案しながら。

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