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どうして




 教室で、いきなり日向が陽介に尋ねた。
「なぁ、どうして陽介は豆腐が嫌いなんだ?」
「な、何だよいきなり」
 突然振り向いた日向に尋ねられ、陽介はつい驚いて手からペンを落とす。突拍子な行動に、うまく反応出来なかった。
「ふと気になって」
 日向はそう言って、黙ったまま陽介をじっと見つめる。暗に答えを催促してると、陽介はすぐに分かった。
 あーえー、と曖昧に言葉を濁しながら、陽介は腕を組んで考える。
「……なんか口の中でぼそぼそっていうか。食べた時の感触とかさ。あと微妙な味具合……とか?」
「何で疑問形?」
「だって自分でもどう言えばいいかわっかんねえし」
 いきなり聞かれたので、うまい表現のしようがなかった。
 陽介の答えを聞いた日向は、その内容を吟味するように考えているのか、顎を引いて俯きがちになる。
 そして陽介を見て言った。
「よくわかった。その言葉そのままりせに言ったら、すごく怒るだろうってことが」
「う……」
 陽介の脳裏にはっきり、りせが頬を膨らませ怒る姿が浮かぶ。祖母の作る豆腐をこよなく愛しているりせからすれば、陽介の豆腐に対する言葉は、侮辱以外の何物でもないだろう。それは誘拐されるかもと、忠告する時つい完二が口を滑らせた時、覗いた顔からもすぐに分かった。ほんのちょっとしか見えなかったけど、あの睨みようは絶対怒ってた。
「りせが言うには豆腐はいろんな味に馴染むからいいって……」
「そう言われても……」
 食べにくいのは陽介の中で変わらない。
 第一何故日向はこんなことを聞くんだろう。もしかして、俺の好き嫌いをなくそうとしているつもりなのか。もしそうだったら、どこまでオカンなんだろう、と陽介は薄ら笑ってしまう。
 いやでも、ありそうだ。
 そう考えが至った陽介は、少しの希望を混ぜて聞いた。
「……橿宮が料理してくれたら、食べれる……かも」
「それは弁当が食べたい口実だろ」
 すかさず言い返され、陽介は言葉につまる。
「う……」
「まぁ、全品豆腐尽くしでも良かったら、明日にでも作るけど」
 どうする? と首を傾げて尋ねられ、究極の選択を迫られているような気分になった。断ったら、しばらく弁当を作ってくれなさそうな予感がする。
「ちょ、ちょっと待って。考えっから」
 陽介はそう言い、深く考え込む。その姿に、日向は「……そこまで悩む?」と呆れたように肩を竦めた。

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