チェンジ 主人公+クマ ペルソナ34Q小話 2013年05月03日 「クマって陽介の家に居候してるんだよな?」 日向に突然聞かれ、クマは瞬きをしながら彼をじっと見返した。そして頷き「そうクマよ」と答える。「ママさんがいてもいいって言ってくれたから厄介になってるクマ」「陽介のお母さんが?」「そうクマ」とクマが今度は深く頷いた。「ママさんがヨースケの家では一番偉いクマ。だって怒るとすごく怖いクマよ」「まぁ、それはわかる」 陽介が隠し持っていたとあるモノを見つけた時、その母親がどんな対処を取ったか。それを陽介から聞かされただけでも、きっと家では強いんだろう、と日向は内心思っている。きっと怒らせてはいけない類いの人だ。「パパさんはヨースケに似てるとこがあるけど、とっても優しいクマ」 にこにこ笑いながら話すクマに、日向はふぅん、と眼を細める。その声音に含まれている感情に気づいたクマが、日向に顔を近づけて言った。「……もしかしてセンセイ、クマがうらやましいクマ?」「……」 日向は横を向き、クマの視線から逃げた。クマの言葉が当たりだと、肯定しているような反応だった。「センセイって、意外とヨースケにベタ惚れ?」 近づけていた身体を戻し、クマは腕を組んで首を傾げた。「でもクマからしたら、センセイのがうらやましいクマ。だってナナチャンと一緒に住めるんだもの」 帰ったら可愛い声で出迎えてもらって、そして一緒におやつやご飯を食べたり。テレビを見たり。ずっと一緒にいられる。 「クマ、ナナチャンん家の子になりたいクマ」「……」 うっとりと考えていることを言うクマを見つめ、日向は口を閉ざして考え込む。 そうだクマ、と表情を明るくしたクマが、人差し指を立て、日向に提案した。「センセイ、クマと立場チェンジしない?」「……」「センセイはー、ヨースケと一緒にいられてー、クマはナナチャンといられる。良くない?」 どう? と眼で尋ねられ、日向はすぐに首を振った。「いや、いいや。菜々子と陽介どっちかと言えば菜々子がいいから」 即答した日向にクマは、がっくり肩を落とした。そしてゆっくりと首を振りつつ、溜め息を吐く。「センセイはナナチャンが一番クマか……。かわいそヨースケ」 眉間に寄せた皺に指を押し当てて言った言葉は、陽介に対しての同情が多分に含まれていた。 [0回]PR