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二次創作(小説のみ)やオフラインの情報を置いてます。

着信 陽介+クマ




 みかんを食べ終えたクマは、満足しきったように頬を緩め横になると、こたつに潜り込んだ。足元から伝わる暖かさに、一層の幸せを感じる。
「ヨースケー、みかんもいっこ」
 身じろぎしながら落ち着く場所を探し、クマは当然のように言った。
「お前な……」
 向かいでぼんやりテレビを見ていた陽介は、厚かましいクマに呆れる。
「みかんぐらい自分で取りいけよ。お前が食べんだし」
 花村家では、みかんを一箱分買っているが、その殆どをクマが消費している。いざ食べようと陽介が箱の中を覗き、中身の少なさに愕然としたほどだった。元旦早々、出された料理を勢いよく食べていたせいもあり、クマに向けられる陽介の視線は冷えている。
 クマは上体を起こし「ちゅめたいなー、ヨースケは」と口を尖らせて抗議した。
「クマはジュネスのためにガンバって働いてるのになー」
「それと同じぐらい色々やらかしてんのも忘れんなよ……」
 去年とまったく成長が見られない口論に、陽介は閉口する。そして今年もこのノリについていかなければならないのか、と軽く目眩がした。
 溜め息を吐きつつこめかみを叩いていると、こたつの上に置いているクマの携帯電話が鳴った。クマがフリップを開いて、あっ、と眼を見開く。
「ナナチャンから電話クマ!」
 嬉しそうに笑って、何故かこたつから出たクマは興奮して立ち上がり、早速通話に出る。
「ナナチャン、あけましておめでとうクマー!」
 電話に出るなりクマは声を弾ませた。笑いながら、嬉しそうに正月の楽しさを語り出す。菜々子には見えないのに、大きい手ぶり身振りつきで。
「うん。初めてのショーガツ、満喫してるクマ。お節とかー、お雑煮とかー。ナナチャンはどう?」
 尋ねたクマは、ふんふんと携帯電話から聞こえる菜々子の声に、相槌をうつ。陽介に見せていた不遜さは、菜々子と話し出した途端失せている。
 その素直さをこっちに見せてくれれば可愛いげもあるのに。態度の違いに紛然とした思いを抱えていると、今度は陽介の携帯が鳴る。
「――橿宮?」
『クマどう?』
 携帯電話の向こうから、くすくすと笑う声がした。
 陽介は苦笑して、クマを見る。
「あー、喜んでんよ。さっきまで寒い寒いってこたつに潜り込んでたのに、菜々子ちゃんから電話が来るなり、立ち上がってる」
 見せてやりたい、と言うと、さらに日向が笑った。
『じゃあ、写メ撮って送って。菜々子にも見せるから』
「わかった。これ切ったら送るわ」
『菜々子も嬉しそうだよ』
「うん」
『もうちょっとしたら、二人で陽介ん家に行くから』
「分かった。……待ってっから」
 それじゃ、と簡単に挨拶を交わし、短い通話を切る。菜々子と二人日向が来てくれることに期待を膨らませながら、携帯電話のカメラを起動させ、立ったままはしゃいで話すクマにレンズを向けた。

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