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テスト前




 ようやく授業が終わって、待ちに待った放課後。しかし背中に暗雲を背負って机に俯せになりながら、陽介は帰り支度をしている日向に「今日はどうする?」と予定を尋ねた。
 日向は陽介を振り向きもせずに言った。
「行かないよ。もうすぐ期末だしな」
「うわー、ヤなこと思い出させんなよ……」
 陽介は、聞きたくないと言わんばかりに、耳を塞いだ。前回の中間テストは散々だった。もし期末まで赤点を取ってしまったら、親から何を言われるか分かったもんじゃない。
「だからテレビに行かないんだ。勉強、付き合ってやるから」
 勉強道具を入れた鞄を手に、日向が席を立つ。そして、突っ伏したままテスト前の現実を受け入れない陽介の肩を揺らす。
「ほら、陽介行こう」
「行きたくねー……。つか、帰りたくねえ……」
 テスト前になれば、親が勉強しろと口うるさくなる。いい点を取れと脅迫を受けているようで、すこぶる家の居心地は最悪だった。
 机にしがみつき離れない陽介に、日向は逡巡しつつ「だだこねても仕方ない。だったら、少しでも勉強したほうがいい」とさっきより柔らかい口調で陽介を宥める。
「それに夏休み補習なんて嫌だろ。俺だってせっかくの夏休みだから陽介と遊びたいし。だから、な?」
「…………一緒にか?」
 陽介が伏せていた顔を僅かに上げる。脈ありな反応に日向はうん、と頷いた。
「夏休み、陽介がいないとつまらないから」
 咄嗟に出た一言だったが、効果はてきめんだった。そっか、と陽介は陽気に笑って、上体を起こす。
「そこまで言われたら、頑張らない訳にはいかねーよな!」
「う、うん」
 気合いを入れて席を立つ陽介は「ほら、早く行こうぜ!」と日向を急かした。さっきまでの悲壮感は、もう霧散して微塵も感じられない。
 自分の言葉のどこが、そんなに陽介のやる気を起こさせたんだろう。首を傾げながらも、日向はカバンを抱えて、陽介の後を追った。

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