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今日の献立




「俺買い物あるから、もうちょっとジュネスにいる」
「じゃあ俺も付き合うわ。どうせ後は家に帰るだけだし」
 テレビの中の世界から戻って、仲間と解散した後、陽介はそんなやり取りをしながら日向の買い出しに付き合っていた。テレビの中の世界から戻った後はとても疲れてしまうが、日向と一緒に居られる時間をもっと増やしたい。売り場をついて回るだけだが、それだけでも心が満たされていく。
 案外現金だな、俺って。陽介は日向にバレないよう、こっそり苦笑した。
「どうした?」
 キャベツを手にして吟味していた日向が、不思議そうに陽介を見た。
「いや、何でもねーよ」と陽介は首を振り、日向が持つカゴを興味深く覗きこんだ。
「今晩の献立は何?」
「ロールキャベツ。あと何かもう一品ほしい」
「相変わらず、すげーなお前。俺だったらキャベツの千切りで限界だ」
「褒めても何も出ないからな」
 日向は指を顎に当て、考える素振りを見せた。真剣に献立をどうしようか、悩んでいる。
「なぁ、お前だったら何食べたい?」
「俺?」
 自分の鼻先を指差してから、陽介は腕を組んで悩んだ。
「俺だったら……何でもいいけどな」
「答えになってない」
「いやでも本当のことだし」
 日向の作る料理はどれも美味しく、なんだって食べたいと思う。それこそ嫌いな豆腐でも食べれそうだ。しかし日向は陽介の答えが気に入らなかったらしく、悩み続けている。
「菜々子ちゃんだって、お前の作るものならなんでも喜ぶと思うけどな」
「俺としてはなるべく栄養がバランスよく取らせてやりたいんだ。菜々子はまだ小さいし、叔父さんだって」
「堂島さんが?」
「刑事は忙しいだろう? 夜遅い時も多いし、インスタントで済ませてる時も多いから」
 日向からすれば、堂島の食生活も気になって仕方がないんだろう。難しい顔で、野菜を見ている。
「……お前はどこの主婦だよ」
 高校生離れしている所帯じみた悩みに、日向の真剣な横顔を見つめながら陽介は呆れた。そして、そこまでしてもらえる堂島親子が、ほんの少し羨ましい、と思った。

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