保護者 主人公+花村+クマ ペルソナ34Q小話 2013年05月03日 「……買い出し付き合ってくれてるお礼に、何か菓子でも奢ろうか?」 お菓子売り場に差し掛かると、日向が陽介に何気なく聞いた。「いやいいし」 即座に陽介は手を振って断った。「つか、お前って、何気に俺を子供扱いしてねえ?」 弁当を持ってきてくれた時は好物ばかりだったし、授業で当てられても嫌な顔せずに答えを教えてくれる。嬉しいし有り難いけど、たまに甘やかされているような気持ちになる。 日向は瞬きながら、陽介の顔をじっと見た。「そうでもない……と思う。多分」「しっかり否定しろよそこは!」 確かに情けないところばかり見せているし、泣いてしまった時は慰められて、日向には面倒ばかりかけているのは陽介も自覚している。だけどここははっきりと否定してほしかった。本格的に駄目な子みたいな気分になって、落ち込んでしまう。 眩む頭を押さえ、溜め息を吐いていると「センセーイ」と後ろから明るく弾む声がした。日向と陽介が揃って振り向けば、煌めく笑顔を振りまくクマがエプロン姿で走ってきた。 クマは両手を広げ、真直ぐ日向に「いらっしゃいクマー!」と抱き付く。「センセイが来てくれるなんてクマちょー感激!」「クマは今日も仕事?」「そうクマよー」とクマは抱き付いた日向の胸にすり寄りながら答えた。「今日一日、頑張って働いたの。センセイ、クマを褒めてくれる?」「うん。偉い偉い」 日向はハチミツ色の髪を撫でながらクマを褒めた。満足そうなクマを見て、面白くないのは陽介だ。「こら、お前はまだ仕事終わってねーだろ」 クマの後ろに立って、陽介はその首根を掴み日向から引きはがす。「ちょっ、何するねヨースケ!」 後ろから引っ張る手を払いのけ、クマはむっと唇を尖らせ抗議した。だが陽介も負けず、半眼でクマを睨み返す。「この前寝具売り場のベッドで寝てたのはどこの誰だよ」 見に覚えのあることを持ち出され、「そ、それは……」と少しクマは怯む。「また夜の間ずっと仕事したくなかったら、しっかり働け」「んもうヨースケは厳しすぎるクマ……」「頑張れ」 日向がクマの頭に手を置いて、優しく撫でた。「菜々子がまたクマと遊びたいって言ってたから、仕事しっかりやって会いに来てやってくれ」「ナナチャンが!?」 菜々子の名前が出た途端、クマは「ナナチャンが待ってるならクマ頑張る!」とやる気を見せた。そして「また今度お菓子を一杯買って持ってくるクマ」と元気に言いながら、売り場に戻っていった。「元気だな」「元気が有り余りすぎて、たまにこっちまで被害がくるけどな……」 クマを見送る日向に、陽介が疲れた声で言った。賑やかなのはいいが、たまに振り回されすぎて、こっちが疲れてしまう。「でも放っておかないんだろう? 何だかんだ言っても、陽介はクマの保護者してるよな」 指摘して小さく笑う日向に「お前にそれは言われたくねーなぁ……」と陽介は肩を落す。しかし、確実にクマの保護者は自分だと周りに浸透しているのが事実だ。陽介はまた眼の眩みを感じると、こめかみを押さえ深々と溜め息を吐いた。 [0回]PR