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安心?




 テレビに行く日の橿宮は、探索やシャドウとの戦闘に備え、準備に余念がない。だいだら.で前回の戦利品を売り、装備を整え四六商店でその日の予算ぎりぎりまで回復するアイテムを購入する。
 仲間に負担を掛けないよう、リーダーだからと事前に自分でするところが橿宮らしい。かと言ってリーダーばかりに負担を掛けさせたくない俺は、出来るだけそれに付き合ってる。ありがとう、って橿宮は言うけど相棒なら当たり前だろ。
「ヒールゼリー、マカの葉」
 メモを見る橿宮の言葉に合わせ、俺はさっき四六商店で買った商品が入っている袋を覗き込んで確認する。
「ある」
「反魂香、カエレールとドロン玉」
「ある」
「それから……」
 同じようなやり取りを何度か繰り返した。探索は一歩間違えると取り返しがつかなくなる事態にだってなりうる。入念にチェックし、うん、と頷いた橿宮は眼を通していたメモを畳んだ。
「今日はこれが半分ぐらいになるまで粘るつもりでいくから」
「なくなるまではしないのか?」
「道具は余裕があるほうがいいだろう。ペルソナで大分補えるとは言っても、何があるかわからないし」
 きっと周りの人間が聞いてたら訳わかんないだろう話をしつつ、俺達は最後の場所へ向かった。
 完二ん家の隣にある辰姫神社。鬱蒼と社を取り囲むような木々の葉が、風に揺れてさわさわと音を立て、聞いてると少し落ち着かなくなった。
 さっさと境内に入る橿宮を、俺は慌てて追いかけた。奴は数えるのも面倒になるぐらい来ているせいか、すっかり慣れてしまっているようだ。
「……」
 賽銭箱の前で立ち止まり、橿宮は空を仰ぐ。つられて俺も同じ方向を見上げると、屋根の上にキツネがいた。コーン、と一声高く鳴いて、屋根から飛び降りる。結構な高さがあったのに、軽やかな足取りで着地したかと思ったら、嬉しそうに尻尾を振って、橿宮の周りをぐるぐる走ってる。
 人間だけじゃなくて、動物にも好かれてんだな。しゃがんでキツネを撫でる橿宮の背中を眺めて、俺は思った。キツネはうっとりと眼を細め気持ちよさそうだ。
 ……何かすげー悔しいんですけど。
 一頻りキツネを撫でた橿宮は最後にその頭に手をやって「それじゃ頼む」と言った。キツネは分かったと言わんばかりに鳴いて、素早く境内の後ろに引っ込む。
 待つこと数分。戻ってきたキツネは器用に細長いものを背中に背負っていた。袱紗に包まれたそれは、橿宮がテレビで振り回してる日本刀が入っている。
「……にしても何でわざわざコイツんとこに預けてるんだ?」
 兼ねてから思ってたことを俺は橿宮に尋ねた。
 しゃがんで受け取った袱紗を手に、橿宮が俺を振り向く。
「叔父さんに見つかったらヤバいだろう。見つかった瞬間、多分外に出られなくなる」
「……確かに」
 それは大きな痛手だ。自分が身動き取れなくなると理解しているからこそ、橿宮も慎重にならざぬを得ないんだろう。こういう時、リーダーの偉大さをしみじみ感じた。
 キツネが何か催促するように前脚を橿宮の膝に乗せる。
「わかってる」と苦笑しながら橿宮は財布を取り出した。さっき四六商店で使ったものとは違う。正真正銘、アイツの財布だ。
 疑問の欠片もなく財布から金を取り出す橿宮を「ちょっと待て」と俺は止めた。
 橿宮がきょとんと、キツネは邪魔するなと睨むように俺を見る。
「どうしてそこで金がいる」
「どうしてって……。刀預かり金だけど」
「コイツ、そこまで金がいんのかよ……」
 回復させてもらってなんだけど、不信感たっぷりに俺はキツネを見つめた。
 悪いか。
 コン、と鳴いたキツネはそう言っているように聞こえる。開き直ってるな、コイツ。
「……いいのか?」
「いいんだよ」
 ありがとう、とキツネを一撫でし立ち上がった橿宮は、事もなげに言った。
「キツネと相談した上で金額決めてるし。それで安心買ってると思えば」
「俺はお前の財布の中身が心配だ」
 これは早々に他の奴らと相談する必要がありそうだ。自分のことだからって言っても、少しぐらい相談してくれれば良かったのに。
 俺は深く深く溜め息を吐く。その意味を考えようともしない橿宮は「行こうか、皆待ってる」とキツネを伴って歩きはじめた。
 今日は頑張って、金や素材集めするか。
 少しでも相棒の負担を減らす決意をして、俺も橿宮の後に続いた。

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