忍者ブログ
二次創作(小説のみ)やオフラインの情報を置いてます。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

意思表示




 その瞬間、俺はすごくびっくりした顔をしていただろう。
 突然日向の取った行動があまりに衝撃過ぎて、陽介の思考は固まっていた。
 くっついてた唇が離れ、身を乗り出していた橿宮がさっと元の場所に座った。自分がした行動を水で流すように、途切れた会話をごく自然に再開する。
「……で、今日の放課後だけど」
「ちょっと待ったぁ!」
 もちろんはぐらかされる陽介ではない。興奮した面持ちで話を遮り、日向の腕を掴んだ。
 欝陶しそうな目で見られるが、陽介はめげない。逸りだす心臓を宥めて唾を飲み込み、怖々と事実の確認をした。
「お前、さっき俺にキスした? しちゃった?」
「二回言うな」
 日向は呆れて言った。視線が陽介をバカだ、と物語っている。
 そして顔を陽介へと寄せ「夢だと思っているなら、もう一度してもいいけど」とからかうように笑った。
「じゃあもう一回して」
 しかし陽介は即座に頷いた。予想外の反応に、一瞬日向は面食らうが、すぐに落ち着きを取り戻し、言葉通り陽介にキスをした。唇同士が重なり離れる。欲を言えばもっと長い時間してもらいたかった。
「……で、何でいきなりキス?」
 ついねだってしまったが、そもそも不思議に思っていたことを陽介は尋ねる。日向から行動に出るのは滅多にないから珍しい。
「してから聞くのか……」
 さっきより呆れ果て、日向はゆっくり頭を振る。
「い、いいだろっ。お前から――なんてそうそうないんだし」
「そう思われてるだろうからしたんだけど」
「へ?」
 目を丸くした陽介の頬を、伸ばされてくる日向の手が撫でた。
「陽介は、いつも自分だけががっついてると思ってるんだろうけど、それは違うってことを教えたかったんだ。俺だってお前と同じようなこと考えてる」
 鼻先まで顔を寄せ、日向は悪戯が成功した子供みたいな笑顔を見せた。
「言わなきゃいつまでも伝わらなさそうだから、宣言しとこうかと思って」
 陽介は顔を赤くした。まさか日向がそこまで考えているなんて。嬉しくもあり、またちょっと気恥ずかしい。言ってくれればいいのに、と溢れる思いを持て余す。すっごく愛されてる気がする。
 照れる陽介を眺め「そんなに喜んでくれるなら、これからはもっとしたいことを言おうかな」と日向が笑う。触れそうで触れなかった鼻同士がその拍子にくっつき、陽介をたまらない気持ちにさせた。
 陽介は日向の両肩を掴む。
「してもいいけど、俺だってお前にしたいことがまだまだあるんだし、こっちからも言わせてくれよ」
 そう言って、今度は陽介から日向にキスをした。

拍手[0回]

PR