優先順位 ペルソナ34Q小話 2013年04月29日 「なんだこれ」 河川敷の土手。建てられた東屋で寝そべっている存在に、陽介はつけていたヘッドフォンを首に掛け直し、そこへ近付いた。 日向がベンチに横になっていた。足元には釣竿にバケツ。空っぽの中身から、今日は成果が上らず不貞寝してしまったんだろう。「しかし、こんなところで寝るってどうなんだか」 稲羽が元々平和なところだとしても、外で無防備に寝てしまうのは、危機感がない。それとも肝が座っているからか。 ――多分、後者だな。 陽介はくすりと笑みを零して近寄り、日向の寝顔を真上から見下ろした。陽介がいるのにも気付かず、眠り続けている日向は器用に椅子から落ちないよう寝返りを打つ。このまま放っておいたら、ずっと寝ていてそうだ。 見つけてしまった以上放っておけないし、もし風邪でもひいたら菜々子が悲しむだろう。 気持ち良く寝ている日向の姿に、起こそうかどうか迷ったが、陽介は結局彼の身体を揺する。「橿宮」「……」「おい、橿宮」「…………」 揺する手を日向は不機嫌に払いのけた。起こされるのが気に食わないらしい。こっちはお前を心配してるんだけど。頭を掻きつつ陽介は日向を見下ろすが、一向に起きる様子はない。 困って助けを求めるように辺りを見回していると、不意に携帯の着信が聞こえてきた。陽介の設定しているものとは違うそれは、日向がはいているジーパンのポケットから流れている。 流れる着信音に、陽介は首を捻った。何度か日向の携帯に着信が入ったところを見たが、その時と今では音が違っている。誰からかすぐに分かるように設定を変えてるんだろう。 すると、さっきまで熟睡していた日向が瞼を開け、勢いよく起き上がった。うおっ、と驚き後退る陽介には目もくれず素早く携帯を取り出し、耳に当てる。「――菜々子?」 あー、なるほどな。 通話に出た相手の名前に、陽介は日向の反応の速さに納得した。可愛い妹からの着信は、睡魔をも陵駕するらしい。「うん。……うん。分かった、今から帰るから」 短いやり取りをした後、日向は通話を切った。携帯をしまって、釣具片手に立ち上がったところで、ようやく陽介に気付く。「あ、陽介」 びっくりした、と眼を丸くする日向に、陽介はがっかりと肩を落した。「いや、結構前から居たんだけど俺」「そうなのか? ごめん、全然気付かなかった」「……まぁ、いいけどさ」 やってきたのは日向が眠っていた時だったし、仕方ないだろう。「何か、あったのか?」眉を顰めて尋ねる日向に、いいや、と陽介は曖昧に笑って首を振った。「菜々子ちゃんお前を待ってるだろ? 俺のことはいいから早く行けって」「……ごめん」 すまなそうに瞼を伏せ、軽く頭を下げた日向は、じゃあと陽介に手を振って堂島家へ帰っていく。「相変わらず兄馬鹿だよな、アイツは」 それでも初めて会った時に比べれば、大分良い表情をするようになっている。後はそれをもう少しこちらに向けてくれればいいけどな。そう思いながら陽介は、外していたヘッドフォンを耳につけ、自分の家に向かって歩き出した。 [0回]PR
今日の献立 ペルソナ34Q小話 2013年04月29日 「俺買い物あるから、もうちょっとジュネスにいる」「じゃあ俺も付き合うわ。どうせ後は家に帰るだけだし」 テレビの中の世界から戻って、仲間と解散した後、陽介はそんなやり取りをしながら日向の買い出しに付き合っていた。テレビの中の世界から戻った後はとても疲れてしまうが、日向と一緒に居られる時間をもっと増やしたい。売り場をついて回るだけだが、それだけでも心が満たされていく。 案外現金だな、俺って。陽介は日向にバレないよう、こっそり苦笑した。「どうした?」 キャベツを手にして吟味していた日向が、不思議そうに陽介を見た。「いや、何でもねーよ」と陽介は首を振り、日向が持つカゴを興味深く覗きこんだ。「今晩の献立は何?」「ロールキャベツ。あと何かもう一品ほしい」「相変わらず、すげーなお前。俺だったらキャベツの千切りで限界だ」「褒めても何も出ないからな」 日向は指を顎に当て、考える素振りを見せた。真剣に献立をどうしようか、悩んでいる。「なぁ、お前だったら何食べたい?」「俺?」 自分の鼻先を指差してから、陽介は腕を組んで悩んだ。「俺だったら……何でもいいけどな」「答えになってない」「いやでも本当のことだし」 日向の作る料理はどれも美味しく、なんだって食べたいと思う。それこそ嫌いな豆腐でも食べれそうだ。しかし日向は陽介の答えが気に入らなかったらしく、悩み続けている。「菜々子ちゃんだって、お前の作るものならなんでも喜ぶと思うけどな」「俺としてはなるべく栄養がバランスよく取らせてやりたいんだ。菜々子はまだ小さいし、叔父さんだって」「堂島さんが?」「刑事は忙しいだろう? 夜遅い時も多いし、インスタントで済ませてる時も多いから」 日向からすれば、堂島の食生活も気になって仕方がないんだろう。難しい顔で、野菜を見ている。「……お前はどこの主婦だよ」 高校生離れしている所帯じみた悩みに、日向の真剣な横顔を見つめながら陽介は呆れた。そして、そこまでしてもらえる堂島親子が、ほんの少し羨ましい、と思った。 [0回]
欲求 ペルソナ34Q小話 2013年04月29日 たまに無性に触れたくなる。 教科書を見るふりをして、陽介は隣りに座る日向を盗み見た。 雨の日の図書室は、雨音と紙を繰る音が静かに響く。集中して勉強するならここ、と言っていた日向はシャーペン片手に頭を悩ませている。それを見ていた陽介は不謹慎だと思いながら、頬の緩みを止められなかった。 全然分からないんだけど、ともうすぐ迫るテストに陽介は日向に泣き付いて勉強を見てもらっている最中だ。学年トップの日向は、家庭教師のバイトもしているだけあって、教え方も上手い。それに面倒見もいいから、毎回勉強を見てくれと頼み込む陽介に呆れながらも、こうして付き合ってくれる。 勉強と言う名前がつくとは言え、今こいつを独占している。陽介は日向が自分の為に頭を悩ませる姿に、愉悦を覚えた。 ここに誰もいなかったら、こいつに触れられるのに。さらさらと流れるような灰色の髪や、男にしては白い肌に。触りたい欲求にうずうずする指を握りこむ。「――陽介?」 教科書から顔を上げた日向は、頬杖をついてこちらを見ている陽介に、形のよい眉を不機嫌に寄せた。「なにぼんやりしてるんだ?」「あっ、悪い悪い」 曖昧に笑うと「やる気、あるのか?」とさっきより低い温度のまなざしを向けられる。「もちろんあるって! じゃなきゃ、お前に勉強見てくれって頼まねーよ!」「声が大きい」 行儀のなってない陽介を日向が注意すると同時に、周りから痛い視線が集中する。すんません、と笑顔を作って謝りながら「だから、……なっ?」と僅かに身を乗り出して日向をじっと見た。 日向は顔を顰めたままだったが、諦めたように長い溜め息をついた。教科書と参考書の頁をめくり、陽介に向ける。「じゃあ続ける。ここの数式だけど……」 淡々と解説する日向の声は、とても心地よく陽介の耳に届く。説明しやすいように近付いた肩が、陽介のに触れた。その度にもっと触れたくなる。シャツ越しじゃなくて、その肌に直に指を這わせて。俺にしか見せない顔がもっと見たい――。「……陽介?」 ぼおっと日向の横顔に見入っていた陽介に、彼は心配そうに声を掛けた。「どうしたんだ、またぼおっとして。もしかして……具合が悪いのか?」 気遣う日向に陽介は首を振って否定しながら、内心はそれと正反対のことを考える。きっと俺はとっくにどうにかなってるんだろう。こうしているだけでも、お前に触れたくてたまらなくなる。俺の腕の中に閉じ込めて、ずっと離したくなくなるんだ。「なぁ、橿宮」 陽介は日向の眼を覗きこみながら言った。「俺、ここだとまた大声出して周りに迷惑掛けちゃいそうだからさ」 ――俺の家に行かない? 陽介の唐突な誘いに、日向は眼を眇め、小さく首を傾げる。 陽介は固い床から起き上がった。乱れた髪を手櫛で梳きながら、部屋を見る。 すぐ側のローテーブルにはノートや教科書。辺りには二人分の制服が脱ぎ散らかされていた。 陽介は我慢のきかなさに自嘲する。その傍らには、抱かれて疲れ切った日向が眠っていた。彼の身体には至る所に陽介がつけた痕がある。 日向を家に誘ったあと、最初こそ真面目に勉強していたが、やはり一度切れかけた理性は長く保たなかった。ふと絡まった視線を切っ掛けに、日向を押し倒し、思うように触れた。非難の声をキスで喉の奥へと飲み込ませ、身体を押し返す手は、敏感なところに触れることで抵抗を弱らせる。鋭い眼光は、見ないふりをした。 日向は睨んでいるのだろうが、陽介からしてみれば、それすらも熱を煽る一因になる。ぞくぞくと稲妻のような震えが背中に走り、もっと組み敷いた身体を貪りたくなる。「起きたら、怒るよな……」 今更なことを呟きつつ、指の背で日向の頬を輪郭を辿るように撫でた。ん、と日向は唸って陽介の手を払い、背を向ける。 丸まった背中は、猫を思わせる。眠っているのに、全身で警戒されているような感じがした。 それでも陽介は手を伸ばした。日向の身体を挟むように手をついて覆いかぶさり、眠る彼をじっと見下ろす。こうしている間だけでも、日向を独占してしまいたい。こんな時にしか、その願いは叶わないと、分かっているから。 親友で相棒。特別な存在でいれたとしても、たまに不安になる。日向は掴み所がないところがあるから、眼を離したすきに遠くへ行ってしまいそうで、怖い。 こんな風につなぎ止める俺を、お前はどう思う? そう思いながら、自分の浅はかさに唇を歪めて笑った。直に聞く勇気なんてないくせに。「――日向」 いつもは口にしない名前を呟く。名前すら、こんな時にしか言えない。 バカなことばっかり考える俺を、いっそ嘲笑ってくれりゃいいのにな、と思いながら陽介は日向の首筋に唇を落とす。赤い痕を小さな痛みと共につけると、日向の身体がびくりと震えた。 [0回]
夕焼け色の教室で ペルソナ34Q小話 2013年04月29日 放課後の予定がないと、そのまま校舎に残る日が前より多くなった。 誰もいない教室。瞼を下ろして音楽に聞き入っていた陽介は、ふとその眩しさに顔を上げる。 遮るものがない空から、滲む茜色で教室が染め上がっていた。それだけなのに、いつもと全然違う。都会だと、高い建物が邪魔をして、ここまで綺麗に空だけ見えないだろう。稲羽に越してきて、陽介が知ったことの一つだ。 ヘッドフォンに流していた音楽を停止し、耳から外す。外から、掛け声やボールの打つ音、金管楽器の奏でる演奏が遠く聞こえた。 そのうちの一つに橿宮のも混じっているのかな、と思いながら陽介は頬杖をついて、すぐ前にある日向の席を見る。横に掛けてあるカバンの存在が、まだ日向が帰っていないことを教えてくれていた。彼は今、部活に出ている。 別に一緒に帰ろうと約束している訳ではない。ただ勝手に陽介が日向の帰りを待ってるだけ。もう下校してると思っているだろう日向がどんな反応を示すのか、試してみたかった。ガキみたい、と言われればそれまでだけど、それでも見てみたいと思う。どんな反応でも、日向なら構わない、と思ってしまう。 ――ああ、重症だ。 陽介は机に突っ伏し、頭を抱えた。 いつの間にか、膨れ上がっていた気持ち。 日向のことを考える回数が増え、その度に困惑していた。アイツは親友で相棒で、仲間だと思っていたのがどんどん変わっていく。隣にいてくれるだけでは物足りない。もっともっと独占してしまいたい。 かつて好意を抱いていた小西先輩にすら、そう思うことはなかったのに。「――陽介?」 突然後ろから聞こえてきた声に驚いて、大袈裟に肩が跳ねる。伏せていた身体を起こして、扉を振り向くと、ずっと帰りを待っていた姿がそこに立っていた。 部活用のスポーツバックを肩に掛け、「何だまだ帰ってなかったのか」とゆっくりした足取りで近付いてくる。「補習?」「んな訳ねーだろ」 お前を待ってたんだよ、とは言えず「俺にだってこうしてたそがれたい時だってあるの」と仏頂面をした。「そうか」 日向はあっさり納得してしまいながら、自分の席に、スポーツバックを置いた。 窓のほうへと向き直り、「うん。陽介がそうしたいって思うの、少し分かる」と夕焼けの空を眺めた。「綺麗な空だ。都会じゃ、こういうのはなかなか見れないから」 そう言って目を細める日向を、陽介は綺麗だ、と思う。同じ歳の男を綺麗だなんて、自分でもどうよと思うが、それしか今の日向を形容する表現が見当たらない。 赤い夕焼け色に照らされた肌や、すっとした線で作られたような横顔。見ほれて、携帯のカメラで撮って、ずっと大切に持ってたい気持ちになった。ほんの一瞬の姿すら、俺の中に残しておきたい。 日向が不意に陽介を見た。「何か食べに行かないか? 腹が減って仕方ないんだ」 いきなり振り向かれ、陽介は内心驚きながら「お、おお、いいねそれ」と応える。「たまには愛家にしようか。肉が食べたいから肉丼がいい」「お前……。里中みたいなこと言うなよ」 陽介は、食べるものはまず肉!といつもはしゃぐ千枝を思い出してしまう。「別にいいだろ?」と悪戯っぽく日向が笑った。「陽介のも奢るから。待っててくれたお礼」「は?」 陽介は、ぽかんと口を開け、瞬きをした。「俺を待っててくれたんだろう?」 日向はありがとう、と席に座って低い位置にある陽介の頭を撫でた。そして机に掛けていたカバンとスポーツバックを手に取る。「行こう。早くしないと混む」 さっさと歩き出す日向を呆然と見て、陽介の顔はたちまち夕焼けにも負けないほどに赤くなった。まだ撫でられた感触の残る頭を押さえ、勢いよく椅子を蹴って立ち上がる。「お前分かってたんなら聞いてんじゃねーよ!」 乱暴に引っ掴んだカバンを肩に掛け、陽介は怒鳴りながら日向の後を追っていく。肩が震えているから、きっと笑っているんだろう。 意地の悪さに腹を立てつつ、それでも悪くない、と思ってしまうのはやっぱり重症だよな。陽介はそんな自分に呆れて苦笑しながら、夕焼け色の教室を出ていった。 [0回]
air of sweet ペルソナ34Q小話 2013年04月29日 午前の授業が一つ、映画鑑賞と言う名の自習になった。担当の教師が急な出張で学校を出ているかららしい。 画面が見やすいようにカーテンが引かれた薄暗い視聴覚室に、誰もが銘々に好きな場所に座った。中には教室を抜け出して堂々とサボる人間もいるが、怒る先生もいないので誰も止めはしない。 陽介は当たり前のように日向の隣りに座る。いつもは彼の後ろの席な陽介は、満足そうににっこり笑っている。 しまらない笑顔に、少し呆れつつも千枝はそれについて何も言わず日向の前の席――雪子の隣りに座った。この場合、千枝も陽介と似た者同士になる。どちらも滅多に座れない隣りに、憧れていた。 おしゃべりに興じている千枝たちの後ろで日向が机に突っ伏している。腕に顔を埋めて、微動だにしない。「橿宮?」 陽介が、日向のほうに身を乗り出した。橿宮、ともう一度名前を呼ぶ。そして少しの間の後に、日向が僅かに顔を上げ、まどろんだ眼で陽介を見る。 それだけで日向の状態を察知した陽介は、決まり悪そうに乗り出していた身を引いた。「あっ、悪い。もしかしなくても眠ってた?」 さっきと同じぐらいの間があいてから「んーん」と日向がふるふると小さく頭を振る。「でもすごく眠そうだぜお前。何、もしかしてバイトか? それとも内職か」「んー……」「言わなくていいよ。昨日は月曜日だから、内職だ。ったく、根詰めんのも身体に悪いんだから注意しろよ」「うん。…………ふぁ」 頷く声は最後に欠伸へととってかわる。身体を起こし眠気で閉じかける瞼を拳で軽く擦った。 それを見て陽介は優しく微笑むと、「寝ちまえよ」と日向の肩をぽんぽんと叩いた。「どうせ先生もこねーし。終わったら起こしてやるから」「…………」 眠たい目のまま日向は陽介を見つめ、うんと頷いた。挨拶代わりにひらりと軽く手を振り、再び腕を枕にして眠りにつく。 呼吸に合わせて上下する肩に、陽介は眼を細め、背凭れに身を預ける。視線は、日向に向けられたまま、微動だにしない。「…………ねえ」 雪子と楽しく話していた千枝は、不意に反対側に座っていた女子生徒に話しかけられた。振り向くと、彼女はとても神妙な顔をしている。「どしたの?」 千枝は首を傾げた。 女子生徒はしきりに後ろを気にしながら、手を口の横に当て、声を潜める。「あのさ……。あの二人、なんなわけ? やたら雰囲気が甘いんだけど」「え?」 千枝は肩越しに後ろを見て、彼女が言いたいことに気付いた。ああ、と肩を竦め「いつものことだから気にしないでいいよ」と首を振る。「そうだね」と雪子も平然と頷くのに女子生徒は眼を白黒させた。「……いつもの、こと?」「そう、いつものこと。気にしてたらキリないよ」 千枝が当然のように言われ、「そ、そう……?」と女子生徒はそれ以上口を出せず、席に戻っていく。釈然としない表情をしている彼女に「あーあ」と千枝は陽介に対して呆れた。「ありゃ絶対誤解されちゃってるよ……。花村の奴もあれで無意識なんだから怖いよねえ」「でも、幸せそうだよね花村くん。何だかこっちまで幸せになれそうなぐらい」「ま、周りはいたたまれないだろうけどねえ」 千枝の言葉を裏付けるように、教室にいる殆どの人間が、砂糖をまぶしたような甘い雰囲気に動揺している。気付かないのは本人たちばかりだ。日向は気持ち良く眠っているし、陽介は幸せそうにその姿を見守っている。「ほっときゃいいって。どうせこれから先もありそうなことだし、みんなにも慣れといてもらった方がいいよ」 ひらひらと手を振って、千枝は言う。慣れなければ、いつまでも二人の無意識に醸し出す雰囲気に当てられるだけだ。こっちも慣れるまでは大変だったのだから、これぐらい我慢してもらいたい。「それよりもまずはビデオビデオ! なんかさ、カンフーものみたいだからわくわくするなぁ」 ビデオが再生され、映し出された画面に、千枝は瞳を輝かせる。さっそく始まった映画を見入る姿に、「千枝も幸せそう」と雪子はおかしそうに小さく笑った。 [0回]